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わたしの机の上には、一枚のポストカードが飾られている。
好きになった絵画の絵。
あなたを思い浮かべた。赤いポストと一緒に。
最近、そのポストカードが呼んでいる気がする。絵のなかの少女が。
窓の外に見える桜の木が、ピンク色から若葉色に変わりはじめる。
桜吹雪が東京の景色を、どこか儚いものにしている。
わたしは、写真立てに手を伸ばす。あのポストカードが入っている写真立てだ。
思いが湧き立つ。
言葉が浮かぶ。
文章を組み立てる。
伝えたい思い。
けれど結局、触れる前に手のひらを握る。
桜は嫌いだ。どこか、センチメンタルな気分になる。
あなたに会いたい。
桜吹雪舞うなか、そう思う。
あなたはきっと、わたしではない誰かとこの風景を見ている。あなたの好きなビールを片手に、わたしの好きなあの笑顔で誰かと。
ああ。空は青く輝いているのに、桜吹雪がそんな気分にさせる。
桜が一輪、二輪花開きはじたころ、あなたと見たいと、桜色の気持ちになる。
ねぇ、今年も咲いたよ。
あなたの目に入る木はどうだろう。
柔らかい葉が開きはじめた。
桜吹雪に舞う花びらに、わたしの気持ちを乗せて目を閉じる。
写真立てに収まる絵の前に、花びらが舞い降りる。
桜絨毯の上であなたを思う。
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