叶わない出会い

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 今日は水曜日。 昨日も一昨日も、腕を酷使して疲れが残っている。 「おはよう、母さん」 「おはよう。朝食食べてね」  今日も朝食を食べ終わる頃に、アンはやってくるのかな。  こんな日が、これからも続いて……。 「いや、ノートには確か……一週間で記憶がリセットされる、と」  僕は握っていた箸を落としてしまった。 「大丈夫? 顔色悪いわよ」 「ねぇ、母さん。来週になったら、僕はどうなってしまうの?」 「……洋介の記憶は無くなってしまうわ」  つまり、僕が記憶を保っていられるのは今週の日曜日まで。このままの生活で良いのだろうか。  手足が震えて、目の焦点が合わない。気づかない内に泣いてしまったようだ。 「大丈夫、大丈夫よ」  母さんが僕を抱きしめてくれる。 「たとえ洋介の記憶が無くなっても、私の記憶の中に洋介はずっと生きているから。あなたらしく生きてほしい」 「うん。ありがとう、母さん」  そうだ。くよくよしていたら、それこそ時間の無駄じゃないか。僕は僕らしく、この時間を大切にしよう。 「おはようございまーす!」  アンの声が聞こえてきた。 「じゃあ、迎えに行ってくるね」 「うん、行ってらっしゃい」
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