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門番
無事に新歓が終わり穏やかな一日を堪能しようとしていた。
それなのに校舎に入った途端色んな人に囲まれるってなんて最悪な1日の始まりだろうか。
囲んでいる人たちの顔は言葉に表しにくい表情をしていて、誰もなんとも言ってこないから囲まれているこっちも黙っちゃう。
通り縋っていく人も入れば囲んでいる軍団に加わる人もいる。
この軍団が何かは分かっている。
僕がすべきことはあのバカップルを探すこと!どうせまた『ゆーくん♡』とか言ってイチャついてるんだ、場所関係なく。
目を凝らしていると昇降口あたりで手を繋ぎほっぺにちゅっちゅし合ってるカップルを見つけた。あ、口にしやがった。
呑気で幸せそーな奴ら、と思っているとこの軍団をひとめ見て素通りして行ってしまった。
完全に見ていた、中心にいる自分のことも軍団のことも。
「薄情者すぎない?」
だって、君も写真求めて飛んでましたよね。仲間意識皆無?それだけじゃなく僕をダシにしてイチャイチャもしてたよね。
「「「「「「「「「「「「「「「…はぁ」」」」」」」」」」」」」」」
「…」
急に斜め下を向いてため息をつく軍団。
なんか、空気重くない?
どうしたの、君ら。
「…行こ」
もう大体の人が登校し終えてることに気づいて焦った。それにこんな空気の中居続けるのはキツいからそろそろ抜け出す。
人間の壁を突破しようともぞもぞしていると軍団の親玉みたいなのがもじもじ喋り出した。
「ぁ、あの…大勢で追いかけてしまってごめんなさい!風紀委員長に叱られて謝りたくて…だけど追っかけたことは反省してないです!大勢で追いかけてしまったのは、ごめんなさい」
「あ、分かりました。全然気にしてないので皆さんもお気になさらず。では」
そう言うとさっきの人の壁ではなく通り道ができていたからそこを真顔で通った。
大勢でのことに反省して追っかけたことについては全く何も思わなかったと。
別に謝ってくれなくてもよかったしこんぐらいの事だったら最初から囲まれないようにしてたのに。
僕の時間はたくさん使われたのに大したことじゃないし、謝った側はスッキリしてるのかもしれないけどこっちはスッキリどころかずっしりみたいな感じだ。
後味がスッキリしないまま教室に向かっていると鼻血を垂らしスマホで男同士がいちゃついている動画を血眼で見ている花野井くんがよろよろと歩いていた。
「二階堂くんおはよう!今日も今日とて眩しいくらいかわいい受けだね!」
「うん、おはよう。僕受けも攻めもなる気ないんだよね」
「希望を諦めずに生きるをモットーにしてるから大丈夫!そんなことより遅れるよ?」
「あ…」
今思い出した、花野井くんはいつも教室に来るのが遅い。先生がくる直前みたいな時もあれば普通に遅刻してくる時もある。
つまり花野井くんの隣で呑気に歩いているというのはそこそこの時間だということ。
これは、どっちだろうか。
完全遅刻かそれとも直前登校か…
ピーンポーンパーンポーン…ピーンポーンパーンポーン
「あ、鳴ったね」
「………はぁ」
鼻血を出し続けながら呑気に動画を見続ける花野井くん。
君はなぜそんなに焦りを感じていないのか。
囲まれるし遅刻するしなんて最悪な朝だろう。
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あいさつが遅れましたがあけましておめでとうございます。
ストックがある時は2日連続で投稿したりして1週間投稿しなかったりと計画性がなく投稿頻度ががたがたですがこれからもよろしくお願いします。
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