門番

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なんの毛を詰め込んだらこんなにふわふわになるのか気になるソファーに座らせられ右と左に双子が立って逃げ出せないようにされた。 「昨日は何があったのでしょう。全校放送で呼び出したはずなのですが?」 その質問は避けて通れないのは分かっていた。嘘をつけば見透かされ、本当のことを言えば喧嘩売ってんのかとキレられる。 脳を高速で回転させ思いついたのはーー 「あー…えっと…そのぉー…」 「もごもごしてないで答えてもらっても?」 「え、あ、はい。……あれその、あれです」 「あれ、とは?」 「あれです」 そう。言葉通じる可能性が微塵も感じられない奴になりきること。 こんな返答ばかりしていると副会長はだんだんとイライラが溜まっていっているらしく見るからにテンションが下がっていた。 「喧嘩売ってんですか?」 「喧嘩は売買するものじゃないです、喧嘩は喧嘩ですので!」 副会長の言ったことに抵抗したら周りにいる生徒会役員全員がなんだこいつという瞳を向けてきた。 わかる、喧嘩は売買するものだし喧嘩は喧嘩ってなんなんだろう。 できるだけ癇に障ることの無いような喋り方をすることでどんなにはちゃめちゃなことを言おうと副会長の機嫌のバランスを上手く取れた。 「門番の件ですが」 副会長の機嫌が少し落ち着いたから修羅場は超えた気がする。 「1ヶ月とさせていただきます」 「はい、1週間懸命に守らせていただきます」 「1ヶ月です」 「…ですよね、頑張ります」 「6時間目の授業が終わってから15分以内に来てください。1分遅れる事に一日追加していきますからね」 15分。 いつも僕が帰る支度にかける時間は10分。そして教室からここまで来るのに10分は余裕で超える。 走れば5分は行けるか、もっとスムーズに計画的にすれば支度に10分もかからない。 そんなことを悶々と考えていると冷たい目をした副会長が短く言い放った。 「早速今からお願いします」 「はい」 扉の前に突っ立っていればいいだけだと思いこんでいる。 まさか今日からが地獄の1ヶ月の幕開けだなんて思わなかった。
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