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片倉は申し訳なさそうに頭を下げる。そうしてまた、作業が開始されたのだった。サキは悩み事が思いもよらない形で解消され、今日の晴天のように晴れやかな気分であった。
後日。いつもの教室で、先日の事件について談笑しているサキ達三人がいる。
「あの時ああ言われてなかったら…… 今頃もきっとたくさん失敗してたと思うな」
そうサキは微笑んだ。文代もこう続ける。
「そうねえ。サッちゃんの悪い噂もなくなったし本当に良かった!」
「まぁ、あんまり浮かれちゃダメよ。勝って兜の緒を締めよとも言うし…… 」
峯子は嬉しそうなサキを諭すように言った。
「はいはい、わかってるよ。副級長さん」
「まったくもう!」
口でこそ怒っていたが、峯子の顔は笑っていた。
サキは第一の関門…… を乗り越え、また新たな一歩を歩んでいく。
――夕暮れの昇降口。下駄箱だけが並んだ静かな暗がりに、一人の少女が現れた。サキたちより少し背の高い彼女は上級生だろうか。周りをきょろきょろと確認しつつ一年生の下駄箱の前にやってくると、そのうちの一つに何か手紙のようなものを入れる。そして、音がしないようそっと扉を閉めた。
「読んでくれると……いいんだけど」
そんな彼女のつぶやきは誰の耳にも届くことなく、彼女自身とともに暗闇へと溶けていった。
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