7人が本棚に入れています
本棚に追加
第二話「謎の手紙」
静かで穏やかな春の日。金城サキは戦慄していた。この前の泥んこ事件からあまり日数も経っていないのに、下駄箱に入っているこれはなんだ、新たな事件の火種なんじゃないか。こんな思考が頭の中でぐるぐるしている。
「まいったな……」
「火種」というのは手紙のことであった。これを入れたのが誰なのかは分からない。何かを破ったような紙で作られた便箋に入れられている。ちんちくりんの自分にはありえない、と思っていたがもし男子からだったら……。下駄箱まで侵入して入れたなんて考えにくいけど。男女七つにして席を同じくせず、交際なんて以ての外なこの世の中、今度こそダメかもしれない。
「サッちゃんどうしたの? 早く行きましょうよ」
隣にいた文代が不思議そうに声をかけ、その直後でサキの手元にある物体の存在に気づいてあっ、と声をあげた。サキも思わずあっ、と声をあげて後ろにそれを隠す。
「これは、えーと、別に変なものじゃないよ、ただね……」
視線が泳いでいる。慌てているときの癖みたいなものだった。
「下駄箱に入ってたの?」
「……え、えーと……そうだよ」
最初のコメントを投稿しよう!