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「えっと……、こういうの初めてだから……どうお答えしていいかわからないんです。嫌だとかそういうのではないんですけれど……」
「なんだ、そうだったの! それならそこまで不安がることないわ!」
敏子の顔が一気に華やぐ。
「そうよね、一年生だものね、でも大丈夫よ! これから困ったことがあったらなんでも相談してくれていいから!」
「あの、敏子さん」
「これからはお姉様って呼んでちょうだい! これからよろしくねサキちゃん!」
何を勘違いしたのか彼女は嬉しそうに握っていた手をさらに強く握った。サキがどう対応すべきかと困っていると、それに気が付かない敏子はさらに次の言葉を発する。
「私はそろそろ時間だから戻らなくちゃいけないんだけれど……今日は会えてよかった! じゃあね!」
そして、サキが口を開く間もないうちにサキの手を離すと大きな建物の方へと走り去ってしまった。
「行っちゃった……」
しばらく呆然と立ち尽くしていたが、サキの方もそろそろ午後が始まる時間だ。ひとまず早く戻らねば、と教室へさっさと帰……ろうとしたとき、遠くに見覚えのある人影が見えた。
「弘子ちゃん……」
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