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こちらに気づいた弘子はすかさず逃げようとするが、運悪く躓いて思い切り転んでしまった。サキは逃がさんとばかりに弘子のもとへ駆け寄る。
「ちょっと、どうしてここにいるの?」
弘子は倒れたまま、一度深くため息をついた後、こう発した。
「手紙のことが気になって覗きに来ちゃいまして……」
「……なんで場所が?」
「聞き耳立ててました」
ずっと自分たちを避けていたのにいつ聞き耳を立てていたのか。
「でも……敏子さん、あの人はいいお姉様ですね。明るくて、頼りになりそうで」
「はぁ」
「それにとっても雰囲気が素敵です、運がいいですよあなた! ああ羨ましい‼」
「……早く帰らないと怒られるよ」
延々と敏子を褒め続ける弘子の話をサキは適当に聞き流し、無理やり彼女を立たせると、引きずるようにして急いで教室まで向かうのだった。
「あらサッちゃん、弘子ちゃんも。遅かったわね」
「二人共、もうすぐ午後になるから早く準備してちょうだい」
教室に帰ると文代と峯子がいそいそと、珍しく行われる午後の授業の準備をしていた。
「うん」
「そういえば、敏子さんとはどうだった?」
ふと文代が尋ねる。
「それが……」
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