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「ふふふ……そうね、あなたはそのために頑張ったようなものだからね……」
小さな頃からずっと一緒だった文代なしでの生活など、サキには考えられなかったのである。単純明快で彼女らしいといえばらしい志望理由であった。ふと、トヨが優しく声をかける。
「そうだ、合格のお祝いにできる限り白いご飯炊いてあげる。……これくらいしか出来ないけれど許して頂戴ね」
最後の言葉は消え入りそうなくらいに小さく、サキの耳には届かなかった……。が、白いご飯という言葉を彼女が聞き漏らすことは無い。
「ほんと⁉ やったぁ‼」
白米なんていつぶりかと丸っこい目を輝かせるサキ。そんな姿にトヨは嬉しさや寂しさの入り交じった複雑な気持ちを抱いて、困ったように微笑むのだった。
――一ケ月ほど後。桜もすっかり散って、新緑の輝く季節。お昼時の蓮咲高女一年二組の教室には、机に突っ伏すサキとそれを宥めるお下げの女学生、文代の姿があった。
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