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「そうだぞ茂、あの寂しがりのお父ちゃんだってお国のために出征してったんだ、俺達だって頑張るんだよ!」
再び渉が茂に向かって言ったが、その口調はどこか自分に言い聞かせているようにも見えた。
「警報解除〜」
解除の合図とともに日常へと戻る。だが一家、特に茂と渉の二人は疎開の話が頭から離れず、暗い気持ちを引きずっていた。一家は無言で食事の続きをしていたが、サキが沈黙を破った。
「や、やっぱりお爺ちゃんの言う通りかなー、ヘマしなくて済むようにするの」
「まだそれ考えてたのか? どうしてこうなのかなぁ……うちの姉ちゃんは」
学校の話以上に深刻な会話をしていたことを知っていながらのサキのこの発言。弟の渉にも呆れられていたが、サキは気にもとめない。
「ええと……ほら、楽しいこと考えた方が気分も楽になるよ。女学校で上手くいって人気者、なんて」
あくまでもサキなりの励ましのつもりだったらしい。効果はともかくとして。
「女学校のこと考えたって楽しくねぇやい!」
一家を束の間の笑いが覆った。
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