第一話「我ら新入生」

8/12
前へ
/126ページ
次へ
 翌日。晴れ空の下また畑仕事だ。昨晩も結局失敗をなくす良い方法は見つからなかった。ここ 最近の考え事はもっぱらそれだった上、毎回見つからないのでもう慣れっこではあったが。人間 何事にも慣れるものだ。半ばやけくそ、と言った感じで鍬を振り下ろし続ける。 「あら、今日は校長先生がいらしているのね」 隣で作業をしていた文代が何気なくこう発した。どうやら蓮咲高女の校長が作業を見に来たようだ。 「ここでしくじったら我が一年二組の恥になるわよっ」 文代のさらに隣にいた峯子がサキの方をキッと睨み釘を刺す。文代は若干困り顔である。 「わかってる……」 言われなくたってそれくらい理解できる。サキはなるべく彼が早く帰ってくれることを祈り、作業に専念することにした。なるべく目立たないようにひたすら手を動かす。が、やはり校長のいる 方向が気がかりで仕方なかった。そのせいで……何度かきちんと耕せていないと級長組に小声で 注意を受けた。  その暫く後。校庭の畑には、何故か女学生たちと共に作業に取り組む校長の姿が。 「いやぁ、見てるだけというのも忍びなくてね。少しの間だけになるけど参加させて欲しいんだ」
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加