365日、いつでも美しい

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「だって、奇跡の一枚なんでしょ」  男性がカメラを裏返して、背後の画面を私に向けた。 「こっ、これは!?」 「だから、奇跡って言ったんです。桜の花びらが重なって、お姉さんの両目が隠れちゃってますね。ププッ」  男性は噴き出しそうなのを(こら)えているようだ。 「もう! 何が奇跡なんですか!!」 「これって、極めて低い確率です。撮ろうとして撮れるもんじゃないですよ」  私はカメラを両手に(つか)んで、改めて画面をのぞき込んだ。 「ふ、ふふふ」  お腹の底から、笑いが込み上げてきた。 「これ、何かの犯人じゃない。黒線じゃなくて、桜で目を隠された」  私は大声を上げて笑った。お腹が痛い。 「いいですね。その笑顔。それですよ。さっきは目が怖かったです。桜がそれに勘づいて覆い隠してしまったんじゃないでしょうか。もう一枚、撮りましょう!」  私は促されるまま、桜の下に移動する。  肩の力が抜け、リラックスしている。男性の「笑って~」の声にも、自然な笑顔を向けることができた。  シャッター音のあと、男性は画面を確認する。 「いい写真が撮れました。これ、コンテストに応募してもいいですか?」 「えっ……ええ。いいですけど」  突然の申し出に少し戸惑う。 「記念にその写真いただきたいわ。後で送ってくださいます? メールアドレスを教えておきますので」 「メールはやっていません」 「じゃあ、何かのSNSアカウントを……」 「SN……って何ですか?」  SNSを知らないの? 化石みたいな人……と思ってしまう。
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