365日、いつでも美しい

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「ちょうど昨日、七回忌が終わりました」  間違いない。  私が会ったのはこの人の息子だ。信じられないけど。 「この写真を見て、ここに来ました」  私はスマホを操作し、SNSで見つけた写真を店主に見せた。 「そうですか。うれしいです。押し入れを片付けてると、息子が撮った写真が出て来たんです。あまりに美しい写真なので、村のコンテストに応募したら入賞しましてね。公民館に飾られたのです」  この写真を撮ったのも息子さん。  やっぱり、公園で会ったのは息子さんなのだ。じゃあ、幽霊……?  恐ろしさは感じなかった。気さくで、怖い感じはしなかったから。 「散り掛けの桜も美しい……」  私は、独り言をつぶやいて壁の写真に視線を向けた。 「息子が同じことを、よく言ってました」 「あの、この写真、私のスマホで撮影してもいいですか?」 「もちろん。息子も喜ぶと思います」  私はスマホで壁の写真を撮影した。 「よろしければ、その写真をバックにあなたの写真を撮らせていただけないですか?」  店主が小さく頭を下げる。 「息子がいつも言ってました。桜と美しい女性の写真を撮りたいって」  先ほど、公園で嬉しそうに私の写真を撮っていた男性を思い出す。 「はい、もちろん」  私はスマホを店主に渡し、写真の横で笑顔を作る。店主がボタンを押すとシャッター音が響いた。 「いやー、ありがとうございます。息子の夢が叶いました。もしよろしければ……」  私は店主が言いたい事をすぐに察した。 「写真を綺麗にプリントして、この店へお送りします」  店主は目を細めて会釈した。 「息子は女性と話すのが苦手でね。モデルになってもらえる人がいませんでした」 「そんなこと、なかった……と思います。とても、楽しい会話ができる人、だったんだろうなーって思います」  私の不可解な返答に、店主はハハハと小さく笑った。 * * *  食事を終えて、店を出た。  薄暗くなった空を見上げて、大きく息を吸って、吐いた。  いったい私は何を追いかけてたんだろう?  他人の力をあてにして、我を満たそうとしていた自分がちっぽけに思えた。 「桜はいつだって、美しいーーーー!」  空に向かって大声で叫んでやった。  そして、駅に向かって歩き始めた。 (了)
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