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壱
「·········花火?」
西の再興の為に家臣達との会議を終わらせて仮の政務室にしている部屋に戻ろうとした時だ。
何故だか妹の笑顔が頭をよぎった。
妹の花火は傀儡を保護する為に翠達と共に不尽の森に行っている。
妙な胸騒ぎを感じた。
「どうした?」
後ろから声をかけてきたのは南の雷軍の隊長をしている雷煉。
「大丈夫だろ?」
---頭がいるんだから。と、雷煉は己の君主であるララに対して絶対的な自信がある。
ララが殺られるはずがない。
彼はそう信じていた。
*
---ドサリと、地面に落ちる音。
地面に生暖かい己の赤色の血液が流れ染み込んでいくのが分かる。
右腕は黒く焦げて腹は貫かれ、これじゃあ·····
霖を助けられないどころか
兄に会えなくなる。
「·····ぐ···ぅ」
震える左手で震霆の足を掴むが、震霆は冷たい瞳で花火を見下ろして左手を蹴り上げる。
あぁ。
ダメだ····
霖が連れて行かれる。
耳に聞こえるのは震霆が歩く音。
身体が少し焦げ臭く感じた。
これが炎使いの最期なのだろうか。
·······こんな所で
死んでたまるか。
己の腹部に手を置いた花火は己の腹を焼き始める。
黒くなった腕は····まだ使える。
腹部と背中を焼き焼灼し止血した。
前と後ろが酷く痛い。
しかし、それでも
「目が覚めたわ·····」
フラリと立ち上がり、左手に刀を召喚させる。
足に力を込めて踏ん張り、刀を構える。
「·····頑張るねぇ」
呼吸を最小限に抑えて震霆を睨む。頭から落ちた簪の事なんて今は気にしてられない。
花火は地面を蹴り、震霆へと走る。
しかし、震霆は一瞬で花火目の前に入り込み焼いた花火の腹部に手を添え電撃を流し、吹っ飛ばした。
「お前が俺に勝てるわけないだろ?雌犬が」
はい、そうですね。
「···と、言うと思ったか···クソ野郎が」
「は?」
---ジジジッと音が聞こえる。それに加え何処からか花の香りが鼻をついた。
「·····しまっ····」
震霆の焦った声が出る前に体内に入った花火の火薬が爆発する。
爆蘭。
火ノ神に教えて貰った技は焔だけではない。花火にもこの技を使う事が出来る。
ただ、兄と比べれば幾分か威力は劣るのが悔やまれる。
いや
じわじわと死に近づける方がこの男には相応しいだろう。
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