不思議なお食事処

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祖父は自分で言っていた通りに夏を過ぎてから体調を崩し、その年の冬の寒い日に亡くなった。 学校の忌引き明けにはちょうどひかりの定期テストがあって、テストは全教科滞りなく受けることが出来た。 遠慮がちでシャイで、よく周りを見ている。 意図せずとも、こんなところまで祖父らしかった。 臨終間際、病院で混沌としながらも嬉しそうに「1杯やろうか」と呟いたのが最後だったと聞く。 「じいじ」 無意識に昔の言い方をしていた。 人前では祖父と呼んで久しいが、祖父に直接呼びかける時は「じいじ」だった。 店員に追加で注文をする。 「日本酒をください。2杯分」 銘柄は「いいちこ」。祖父が好んで飲んでいた酒だ。
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