誕生日

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「ママが帰ってきたな」 パパが言う。 「ママ? もう?」 早く帰ってくるって言ってたけど、早すぎない? しばらくするとドアが開く音がして、 「もう誰かいるのー?」 とママの声がした。ほんとだ、ママだ 「俺とイツキがいるよ!」 パパが答えた。 「帰ってるのね」 「ただいまぁー」 今度は妹のモエの声だ。パタパタと走ってくる足音。 「ココ、ただいまー」 リビングではセキセイインコのココが、また「タダイマー!タダイマー!」と賑やかに真似をした。 「パパ、ただいまー」 モエが嬉しそうに台所に入ってきた。ママも一緒だ。 「あら、いい匂いね」 ママが微笑んだ。 「いいにおいする」 モエも喜んでる。 「もうすぐ焼けるぞ、カメラはあるか?」 「カメラ?」 スマホじゃなくて?  ママが不思議そうにする。 「そうカメラだ。今日は誕生日なんだから」  パパの提案に、ママが大急ぎで二階へカメラを探しに行った。モエも付いていく。 「あった、あった。入学式のとき、持って行ったやつね」 二階から声が聞こえてくる。 「あったよーイツキ。ニュウガクシキもっていった」  モエが得意そうにママの口真似をした。  焼き上がりの合図のメロディが、楽し気にオーブンから流れる。  セキセイインコのココも一緒に歌っていた。 「あら、美味しそうね」 「おいしそう」  ママもモエも嬉しそうだ。パパがピザを、オーブンから慎重に取り出して、テーブルの上に乗せた。 「まだ食うなよ。イツキ、モエ、まずは写真撮るからな」  イツキとモエは二人そろってテーブルに付く。目の前には焼き上がったばかりのピザ。兄妹そろって写真を撮ってもらう。 「写真は撮ったから、さっそく食べるか」  パパが切って、ママに取り分けてもらうと、ふうふう吹きながら焼き立てを食べていく。チーズがとけて、トマトもピーマンも柔らかい。でもフチはカリカリ、サクサクで香ばしかった。ママも美味しそうに食べている。 「どうだ?なかなか上手いだろ?」  パパは満足そうだ。  皆で夢中になって食べていると、カゴの中ではセキセイインコのココが、まるでみんなと一緒に食べるかのように、自分のシードフードを食べ始めていた。
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