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 安藤はためらうことなく発砲した。銃弾は冷酷にバットを手にした男たちの頭を貫通し、血とともに脳漿が飛び散った。パートナーの田母神も銃を取り出して、客たちを威嚇する。「カネをもらいにきた。わかったら、両手を頭の後ろに回して組め! 抵抗したら死ぬぞ!」  田母神が威嚇している間に、安藤は死体をまたぎ、バーカウンタ―に積まれた札束を用意してきたリュックに詰め込んでいった。支配人の鷺山が憎しみを込めて安藤をにらんでいる。安藤は鷺山の動きを感じ、顔を上げた。鷺山がアイスピックを握りしめ、カウンターを跳躍した。安藤に飛び掛かってきた。安藤と鷺山が絡み合いながら床を転がった。その衝撃で拳銃が落下して、床を滑っていく。半ぐれ客のひとりが銃を拾い上げ、田母神に向けて発砲した。弾倉が空になるまで撃ち続けた。田母神の体はぐにゃりと曲がって、倒れた。床が真っ赤に染まっていく。  鷺山に組み敷かれた安藤の顔をアイスピックが掠った。安藤はアイスピックを握り返して抵抗した。鷺山の荒いが安藤の顔にかかる。安藤はかろうじてアイスピックを交わしながら、ズボンの尻ポケットからバックアップ用の小型拳銃を取りだした。安藤の本当の仕事は、鷺山を殺すことだ。S&クラブの飲食係の若林美樹は、S&クラブの支配人鷺山の殺害を依頼し、鷺山も美樹の殺害を依頼した。殺害の動機まで詮索しないのが、安藤の流儀だ。美樹はクラブの賭場開帳中に鷺山を始末することを望んだ。殺しの報酬は賭場の寺銭。ヤバい連中のヤバいカネを強奪すれば、どんな運命が待ち受けているのか、安藤もわかっているが、その場に居合わせた人間を全員殺してしまうつもりだった。奪ったカネは相応の分だけいただいて、警察の裏門にでも置いてくればいい。 <大切な金を奪われた被害者救済金、犯人は○○グループです>とでも、手紙を添えておこう。  安藤の放った22口径弾は鷺山の顎の下から脳天へ貫通した。安藤は鷺山の体を押しのけると、田母神を射殺した半ぐれに向けて撃った。そいつの手首は砕かれ、遊底が開いたままの拳銃が乾いた音を立てて落ちた。安藤は落下した拳銃を拾うと、素早く予備弾倉をリロードした。 「気の毒だが、全員死んでもらう」    
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