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 新宿界隈は警察車両のサイレンで騒がしくなった。完璧に仕事をこなしたはずだが、どこかに漏れがあったのだろうか。パトカーが続々と雑居ビル周辺に集結してきた。  安藤は路地裏から路地裏へ歩き、途中の牛丼屋で飯を食いながら背後の状況をうかがった。店の壁時計は午前一時を少し回っていた。会計を済ませて外へ出ようとすると、三人組の制服警官と鉢合わせになった。 「お食事中にところ、すいませーん」リーダー格らしい警官が店内の客たちに向かって言った。「刃物と銃を所持した凶悪犯があたりをうろついていますので、不審者を見かけたらすぐに110番してください」  店内の客層は高齢者から若者までさまざまで、それぞれがわかったのかわからないのか、中途半端にうなずいた。安藤も軽く会釈しながら、警官たちの横をすり抜けた。  安藤が店を出て十秒ほどたった時だった。 「あの、お兄さん。ちょっといいですか」  警官が話しかけてきた。  安藤は電撃されたように体が硬直するのを覚えた。「はい?」平静を装い、振り向く。警官が問いかけた。 「おひとりですか」 「ええ、まあ」  安藤は今時の若者風に無愛想な返事をした。ジャケットのポケットには拳銃、背負ったリュックの中身は札束だ。所持品検査をされたら万事休す。
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