rainy star

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rainy star

 パパは私と違ってテレビが好きだ。ごはんを食べる時には、必ずテレビを観ながら食べる。特に好きな番組はバラエティーで、ガチャガチャと騒々しいだけで私はぜんぜん面白いと思えない。一定のリズムを崩さない、ニュース番組のほうがまだマシだ。  晩ごはんを食べている私たちのそばで、胸の大きな女性アイドルが衣装のまま小麦粉のプールの中に入り、名前も知らないお笑い芸人と相撲を取っている。パパは大笑いしながら、それを指さして上機嫌だ。  ふと、ベランダのほうへ視線を向けた。隣人が弾くギターの音色が聞こえた気がして。  窓のガラスが真っ黒い夜を映している。窓はわずかに開いていて、一度も洗濯したことのない薄汚れたレースのカーテンが、返事をするみたいに揺れた。  食卓に向き直ると、パパが氷のような目で私を見ていた。  あ、と思った時にはもう遅く、パパは熱々のシチューをお椀ごと私に投げつけてきた。痛いと熱いが同時に額を襲って、私は悲鳴を上げて椅子から転げ落ちた。
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