rainy star

3/6
前へ
/248ページ
次へ
 室外機は掃除をしていなくてカビ臭いけど、我慢できないほどじゃなかった。それよりも、前髪から滴るホワイトシチューの匂いのほうが気になってしかたなかった。  だけど、こんなところに隠れたって一時(いちじ)しのぎだ。遅かれ早かれ見つかってしまう。引きずり出されて、またパパの気が済むまで殴られるに違いない。  ところが、パパは追いかけてこなかった。  ピシャンと窓が閉め切られる音がして、施錠の音が聞こえた。そっと室外機の角から顔を覗かせると、ちょうどカーテンが引かれるところだった。  パパは私を見ていて、その瞳には驚くくらい色が無かった。
/248ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加