rainy star

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 私はいつのまにか眠ってしまっていたらしい。でも、目覚めた。  それは、雨が近くの家の屋根を叩く音のせいだったのか。それとも、どこかの部屋の窓が開かれる際にレールが響かせた、カラカラという乾いた音のせいだったのか。その両方かもしれない。  辺りはすっかり漆黒の闇が降りていて、遠くの黄色い信号機がチカチカと(またた)いているのが、雨にけぶって見えた。  寒い。私はカチカチと歯を鳴らしながら、隣のベランダのほうを見た。音がそちらから聴こえた気がした。  何事もなければ、布団の中にいるはずの時間。こんなところに隠れていなければ、パパに部屋を閉め出されなければ、絶対にそれを見つけられなかっただろう。  一瞬、星かと思った。  闇の中にきらめく、夜空からはぐれてしまった、たった一つの緋色の星。  それは、窓からにゅっと突き出されるようにして現れた。  星じゃない。長い銃身に取りつけられた赤いライトの、人工的な光だということに気づいたのは、しばらく時間が経ってからだ。  そう、それは銃だった。  国同士の争いの中、それに似たものを肩にかついで遠くの相手を狙い撃つ兵士を、いつだったかテレビの画面越しに見たことがあった。
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