rainy star

6/6
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/248ページ
 その先端が燃えて火花が放たれる。  発砲されたのだ。でも、何も音がしなかった。銃声とは、お腹の底に響くような、鼓膜を破るようなすごい音がするものと想像していたのに。ただ、その瞬間は耳の奥がキンと詰まった感じになった。  怖いとは思わなかった。胸がドキドキしていた。身体はカタカタと震えていたけど、それは興奮していたせいが大きかった。  頭の中が空っぽだった。まるで私が撃ち抜かれたみたい。  何を思うでもなく、私は身を乗り出していた。膝からほどけた左手が室外機に当たって、かすかな音を立てた。銃を構えていた人物ははっとこちらを向いた。  赤い光が照明となって、ほんのりとその人の顔を照らしていた。柔らかな、とても柔らかな眼差しをしていた。私はその眼差しを知っている。見たばかりだ。  隣人は銃を夜空の彼方に向けたまま、なぜなのか涙を流していた。
/248ページ

最初のコメントを投稿しよう!