devil

2/4
前へ
/248ページ
次へ
 アパートからいちばん近いスーパーまでは、私の足でのんびり歩いて十五分くらい。商店街の通りをぶらぶらしていると、ショーウィンドウの内側に、大きなウサギのぬいぐるみが座らされているのを見つけた。  ウサギの首には、赤と金色のリボンがぐるぐるに巻かれている。その横には、私の背丈の半分ほどしかない、小さなクリスマスツリーが立っていた。  そうか。もうすぐクリスマスがやってくる。  我が家にはカレンダーがない。だから、正確にあと何日で聖夜が来るのかは知りようがないけど、テレビの合間のCMだとか、こういう場所から、毎年その時期が近づいていることを知らされた。  でも、だからどうだってこともない。  ケーキの予約なんて関係ないし、チキンを買う予定もない。クリスマスプレゼントなんて貰えないし、贈りたい相手もいない。  光の眩しい午前中だから、電飾の明かりはちっとも目立っていない。だったら、点けるのは夜だけにすればいいのに。  ツリーのいかにもフェイクっぽい緑と、鎖を巻かれたみたいなウサギを、私は長い間ぼんやりと眺めていた。
/248ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加