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14話
鎮台軍は次第に士気を取り戻し、抱える近代兵器を惜しみなく使い敬神党の一隊を追い詰めて行く。
副将加屋が斃れて後、太田黒が健在であっても彼等の士気は鎮軍に反して悉く落ちていった。
「ええい!怯むな!我等は神兵ぞ!!誰ぞ斃れてもその屍を超えて切り崩せ!」
河上彦斎に始まり、今また加屋霽堅という、古くから交わり育った同胞の死は首領たる太田黒にとって余りに衝撃であり許しがたいものであった。
彼は日頃穏和な人物であるが、この時ばかりは眦上げて怒り、自ら剣を掲げ先陣に躍り出る程の気迫と勢いだった。
その気炎に誘われてか、敬神党の士気そのものは衰えても、隊士らの攻め手は一向に止むを知らぬず、斃れても斃れても我武者羅に攻め寄せた。
鎮台軍の兵士達はその鬼神さながらの攻めに、恐れを抱きながらも頼りの小銃を握り締め、只管引き金を引き続けるのである。
―ドンッ・・・ドンッ・・
数発の銃声がひときわ大きく聞こえる。
その直後にどっと何かが崩れる音が響いた。
辺りは銃声と怒声の入り混じった、激しい戦場であるにも関わらず何か時間が止まった様なそんな錯覚に見舞われた。
「太田黒先生!」
「新開!」
「先生!!」
駆け寄る足音がバタバタと聞こえる。
銃声は未だ止まず。
斃れる音と、銃声と、人々のざわめく声と、様々な音が入り混じるこの場所で、悲痛な声が木霊した。
馬が声の間をすり抜けて走り去っていくが、果たして何ぞあったろうか。
隊士のみならず、鎮台兵らも訝り馬の行方に目をやった後、その出先を覗く。
誰かやられたか―・・・
隊士達は、馬に乗った誰かがやられたと察した。
しかし、あの聞こえてきた悲痛な声は自身らの敗北を意味するものだとも察していた。
「太田黒先生がやられた!皆一時撤退せよ!!」
歩兵営を指揮する部隊の長、富永守国の声である。
どうやら、予感は的中し首領・太田黒が被弾したらしい。
泣き叫びに近い仲間の声と、富永の撤退命令。
―敬神党隊士らにとって、死を覚悟の長い日が始まった・・・
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