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なぁ、おっちゃん。
『なんだ?』
おっちゃんがミニチュア・ジュゴンで、俺がこの場所にいるってことは──
これって、第6話の挿絵部分になるんだよな?
『そうだ。
だが問題ない。本編ではバッサリ切られるシーンだ』
尺の問題ってやつ?
『大人の事情ってやつだ』
ふーん……。
『本編の内容は語るなよ。
またシリーズごと主人公を外されるぞ』
別にどっちでもいいよ。元の世界に戻れるのなら。
……ところでおっちゃん。
俺、いつ向こうの世界に戻れるんだ?
『知らんな』
え? じゃぁ俺はいつまでこうして路上に座って椀を出して、通りすがりの見知らぬ人からお金集めればいいんだ?
『宿代の金がたまるまでだろう』
相棒のスライムはペットで宿代無料だし、仔ドラゴンのコノハもどちらかと言えば人畜無害のペットだ。
俺の分だけでたまればいいよな?
──あ、すみません。お金恵んでもらって。
ありがとうございます。
『お前にプライドは無いのか?』
ここは俺にとって本当の世界じゃない。
だから土下座だって何だってやってやるよ。
『立派に育ったな。お前』
最低な大人だよ、おっちゃん。
早く元の世界に帰り──あ、どうも。お金恵んでもらってすみません。
ありがとうございます。
……あ、はい、頑張って……このお金で……元の世界に、帰り……たいです。
『その金がたまっても帰れることは無いだろう。
そもそも前巻でクトゥルクを使ったお前の自業自得だ。
ペナルティーの話も忘れるほどの鳥頭だからな、お前の頭は』
おっちゃんに言われたくない。
『俺がどんなに手をかけて良いタマゴを孵化させても、立派に育って出てくるのは鶏なんだから仕方ないな』
それ、おっちゃんに失礼だろ。
『失礼なのは鶏だ。俺は関係ない』
一緒だと俺は思う。
すると、おっちゃんが馬鹿にするように鼻で笑ってきた。
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