エッグの中身は因果応報

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「ただいま」  と言って僕は玄関の扉を開ける。 「ねぇ、バッグにメモ入れたのってエッグがやったの?」  と言いながら居間のドアを開けるとそこにはエッグがいつも通りにちゃぶ台にいた。 「うん、そうだけど?」 と何気ない感じに言うエッグに僕は問う。 「………どうして知ってたの?」  と言う質問にエッグは予想外のことを言われたのか、聞き取れなかったのか「え?」と聞き返す。その反応を見て僕は慎重に口を開けて言った。 「どうして僕の会社の場所を知ってたの」 「君が僕のバッグに入っていたのだとしても、入れなかった日もあったはずだ」 「………」  と僕が言うとエッグは言葉が出てこないのか何も言わない。 「僕が早朝に会社に行く時には君は寝ていた。なのに君は証拠動画を収めた。」 「一体どういうことなんだ!」と言う僕に対し、エッグは黙ったまま何も答えない。  しばらく沈黙が続いた時、僕はあることに気がついた。何故気が付かなかったのだろう。自分のことを知っている人物で会社の場所を知っている。それに家までの帰路を知っている人物は彼女しかいないはずだ。 「まさか….美琴(みこと)なのか…..!」  と僕が震える声で言うと、エッグは数秒間、時が止まったかのように身動きひとつしなかったが、突然面白そうに笑ってから言う。 「あちゃーバレちゃったか….」  と言う反応に僕は唾を飲み込んでから聞いた。 「……じゃあ…君はー」 「うん、私は美琴(みこと)だよ」  片時も忘れなかったあの懐かしい面影が僕の脳裏をよぎる。 「……で、でも、なんで、た…卵なの?」  と僕が一番気になっていたことを聞く。本当に彼女なのかはまだわからない。だからこそまだ喜ぶのは後だ。 「…私はー 君のお兄さんを殺した犯人に殺されちゃったの」 「え…」  予想外の言葉に僕は言葉を失った。まさか…美琴(みこと)が殺されていたなんて。そんな僕にはお構いなしに彼女は話を続ける。 「でも、君のお兄さんのおかげでこの卵に生まれ変わることが出来たんだよ」 「じゃあ、その卵の姿は………兄さんが研究していたものってこと?」 「うん、そう。でもね、これだけじゃないよ。この卵はね面白いの。因果応報で決まるんだよ」 「な…何が?」 「どういう人になれるかだよ。いいことをした人は善人になれるけど、悪い事をした人は極悪人として卵のからを破るんだ。もしかしたら怪物になっちゃうかもね」  と言う発言に僕は訝しげながら聞く。 「じゃあ、卵からまた生まれ変わるってこと?」 「うん、そういうこと」  にわかには信じ難い話だったが、その後に彼女しか知らないはずの事を話していたので、美琴(みこと)だということがわかった。この時点でありえないことが起きているのならば、そういうことが起こってもおかしくないかもしれないと僕は考えた。……それじゃあ、あの話は本当なのか………。兄さんがこんな研究をしていたなんて…初めて知ったな…。そう僕は思った。  その後、彼女とたくさんのことを話した。これからのこと、やりたいこと、行きたいことなどを涙が頬を伝うまで話した。 まるで夢を見ているような気分で、僕は彼女と話せるということが何よりも嬉しかった。 あの日まではこの日々が続くと思っていたー
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