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驚いて僕は尻もちをつく。その様子を見た卵は愉快そうに笑って言った。
「僕はねー、君を助けるために来たんだよ」
「……助ける?」
「うん、君の悩みとか相談にのったり、支えたりするために」
僕は夢でも見ているのだろうかと試しに頬をつねってみたが普通に痛かった。どうやら夢ではないらしい。
「えっーと……助けてもらうのは嬉しいけど、君に聞きたいことが山程あるんだ」
そう僕が言うと、卵は考えてから再び僕の方を向いて答える。
「うーん……またしばらくしたら一つずつ教えてくよー」
「ええ、な、なんでー」
「今は無理なんだ。でも、君が焦らずとも僕は必ず話すから大丈夫だよ」
そう言う卵に何か言おうと口を開きかけたがやっぱりやめた。この卵はどういった生物なのか全く分からない。裏を返せば、下手な真似をしたらどうなるかも分からないということだ。仕方がないがこの卵の言う通りにしようと僕は決め、この不思議な卵を見つめた。
こうして僕と謎の卵との日々が始まったのだった。最初は居心地が悪かったり、どう接すればいいかわからなかったが、しだいに卵ともよく話すようになり、今では「エッグ」と卵のことを呼ぶようにもなった。
そんなある日のことだった。僕はあの日のような出来事が起きた時、とうとう大きな失態を犯してしまった。それは、会社の同僚とのある出来事から始まった。僕が会社に来てそれが起こったのは、もう夜遅くの10時半頃、そこには先輩の二人と僕しか残っていなかった。僕がそろそろ帰ろうとパソコンのキーボードから手を離した時だった。「ドタン!」という机を力強く叩く音がすると今度は書類の紙が床に落ちる音が社内に響く。その書類は同僚の人達が徹夜をして書いたレポートや福祉の大切さを述べたものなどだった。
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