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「……弱くない、か」
その言葉が何度も僕の中で響く。訳が分からないが、もしも揶揄せずに言ってくれた言葉なら嬉しい限りだ。
ふと夜景を見たくなって僕はベランダに出る。真夜中のせいか明かりがついている家は少なく、月明かりが非常に目立っている。明日、僕はちゃんと真実を言えるだろうか。………信じてみるしかないのかもしれない。エッグが言うことが本当なのか自分を試してみよう。月を見ながら僕はそう思っていた。
「おはようございます……」
「創くん。ちょっといいかな」
という社長の冷ややかな声が早朝から社内によく響く。
「はい、すみません。今行きます」
僕はすぐに社長の元に行くと、そこにはあの二人もいた。
「この書類のばらつきはどういうこと?しかも、後輩の二人に罵詈雑言を言ったとは…」
社長は軽蔑した目で僕を見る。
何も言い返せないのか………。二人がやった事は僕がやったことになる。
僕は惨めにそう思ったその時だった。
「スマホを取り出して写真のアプリを開いて」
そう書かれたメモが何故か僕のバックに貼ってあったのだ。訝しく思ったが、その手にのるしか今はこの状況をひっくり返せないと判断し、僕はバックからスマホを取り出して写真のアプリをひらく。そこには見覚えのない動画が保存されていた。
もしかして…これはー
「おい、何してんだ」
と言う社長に僕は一か八かスマホの動画を見せて言う。
「僕は一切そのようなことをしていません。これを見てください」
そう言って僕は動画の再生ボタンを押す。
するとすぐに書類を落としたり、椅子を倒したりする二人の姿が荒々しく見えた後、
「何にも反応無しか」
「笑えるなー!」
と言いながら動画の二人は社内を荒らしながら、僕の目の前まで歩いてくる。
「今どういう気持ちだよ」
「何か答えたらどうだい?」
と言う冷笑や苦々しい言葉が耳に飛んできた。
他にも今までの嫌がらせなどがどこで撮られていたのか動画として露になった。周囲の同僚達は突然の出来事にざわつく。それを見ていくうちに社長の顔つきは段々眉間に皺を寄せていき、二人はみるみる青ざめていき、冷や汗をかいていた。
そんな中僕はまだあのことを引きずっていた。ああ……こんなことをしたって、僕はこの二人よりも酷いことをしたんだ。自分の記憶に残らないほどひどく後悔したことをしたのだろう。
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