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そう思った時だった。
「こんなことして……社員の人が作ったポスターや何日もかけて作った資料……それらの努力を踏みにじって何が楽しいんだ!」
という僕の声がスマホから流れる。え?な、なんでこんなことを言っているんだ……。予想外の自分の言葉に僕は面食らった。自分は父親のようなやり方で解決したのではなかったのだ。その証拠に勇気を奮って言い返す自分の姿が鮮明にこの動画に映し出されている。でも、何故このように言えたのだろうか。あの時の自分はこの方法しか思い浮かばなかったはずだ。
「創くんの駄目なところはそういうところだよ!」
…………ああそういうことか…。僕は美琴が怒っていたのを思い出したんだ。彼女の怒り方はどこか優しい雰囲気があって非常に印象に残っていた。僕が会ってきた教師の怒り方とはまた違うもので、自分で考えさせるのではなく短所をちゃんと指摘してくれる人だった。
美琴はいつも僕を支えてくれていた。僕の知らないことを彼女は沢山知っていて、教えてくれた。不安になりがちな僕を彼女は手を引っ張て導いてくれていた。僕の中ではあんなに輝いて見える人は初めてだったから。彼女のおかげで僕はここまで成長することが出来たのだ。そう考えると僕は思わず胸がいっぱいになる。決して僕は弱い訳ではなかったのだ。
「君達はそんなことしか出来ないのか!先輩として恥ずかしくないのか!」
と動画の自分は言う。まるで自分に言い聞かせるように言っているようだった。
「ちっ………」
「次は……お、覚えてろよ!」
二人は社内から飛び出すようにその場を後にするところで動画は終わった。
「……これは……」
「しゃ、社長、その……これは」
「二人共!どういうことだ!」
「え、えっと」
「お前らは嘘をついていたんだな!」
そう言った社長に同意するように同僚の人達が「そうなんです!創さんはいじめを受けていたんです!」と僕の味方についてくれた。二人は言い訳をしようにも社長の恐ろしい顔を見て何も言えずただ下を向いた。その後社長は二人に叱責をした。どうやら、あの動画を見てくれたのと同僚の人達が僕をいじめていたのを目撃していたという証言から、二人が虚言を言っていたということに気付いてくれたみたいだ。その後、社長と同僚の人達、二人は僕に謝罪してくれた。……僕は本当に色々な人に助けられてばかりだ。僕は本当に感謝した。
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