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卒業式の日にもらった卒業アルバムで、私は君野くんの下の名前が『君野春人』であることを知った。
寄せ書きにはたくさんの思い出が詰まっているし、卒業してもみんなと連絡はとれるはずなのに、なぜか私はむなしくなった。
私たちは、あの桜が咲き誇ったような季節にはもう戻れない。
隣で美しく咲いていた花びらたちも、どこかへと消えていく……。そしてその中のいくらかとは、もう二度と会うことも思い出すこともない。
ああ、やっぱり私は桜を嫌いになりそうだ。
そう思いながら息を吐いて、私は根上りのふくらみから跳ねるように降りると、いつも歩いていた高校の方向とは逆のほうへ、桜並木を歩き始めた。
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