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葉桜になった桜並木を、私は根上がりしたアスファルトのふくらみに立って見つめていた。
つい数日前まで満開だったのに、昨日の嵐のせいもあって、あっという間に花びらは散ったようだ。
桜の幹にはまだわずかに露が残って、少し雨臭い。
雨上がりの空は青くつきぬけるも、薄桃色の桜の花びらは、空を見上げる私の視界の中にはない。
根上がりしたアスファルトの畝に、べったりと張り付いている。または、横を走る自動車のタイヤの溝に、切り刻まれるようにして吸いついている。そうしてばらばらになって、いつの間にか、いなくなる。
桜の花びらは散ったあと、どこへ消えるのか。
ふと、そんな疑問が浮かんで来た時、私は去年まで大好きだった桜並木が、突然嫌いになった。
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