桜の花びらの、そのあとを

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去年の春も、私はここに立っていた。高校3年生になった。 「水川さん、おはよう」 「あ、おはよう」 一年のとき、同じクラスだった男子が声をかけてきた。たしか名前は「君野くん」だったか。 「何してるの?」 「いや、桜きれいだったなーって」 「ね。もうほとんど散っちゃったけど」 「うん。学校はじまるまでに、散っちゃったね」 私は少し寂しそうにそう言った。 この桜並木は私の町の小さな通りの脇に植えられている。大通りと違って車通りは少ないが、学校までの通学路なので、歩いているうちの学校の生徒は多い。 「また来年みれるよ」 君野くんは笑ってそう言った。 来年。来年は卒業しているのか。 このときはそんな風に思っただけだった。
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