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(満開だった桜の花びらは、いったいどこへ消えるのだろう)
私はもう一度、根上りの上に立って、そんなことを思った。
ほんのわずかな間とはいえ、たくさんの人の心をつかんで満開に咲き誇ったあの桜の花びらたちは、美しく散ったあと、どうなるのだろう。
アスファルトや水面には落ちるとして、そのあとはどうなるのか。焦げのように黒く腐乱し、土にのまれてしまうのか。あるいは錆のように変色して、ドブのなかで水をせき止めるのか。
それは誰も知らないし、興味も示さない。
私は桜の花びらのそのあとが、私の、私たちの青春に重なったように思えた。
青春という短くも華やかな期間。
誰もが憧れ、恋をして、夢をみる。だけどその青春のそのあとを、私はまだ知らないし、誰も教えてはくれない。
同じ房のなかで、同じ木のなかで咲き誇ったとしても、その花びらたちはみんな散り散りになって消えていく。
私たちも同じだ。同級生の進路を、私はほとんど知らない。
君野くんの進路も、もちろん知らない。
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