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すでにストライカー歩兵戦闘車の車内には、〈アンティセプティック・チーム〉が全員乗っていた。
付属大学病院精神科の玄関前にストライカー歩兵戦闘車が停まった──。
大きなバッグを持ち、グレー系のデジタル迷彩の戦闘服を着た樫村しのぶがやってきて病院のスタッフにお辞儀をした。そして、ストライカー歩兵戦闘車のそばに並んだ小佐野美潮隊長をはじめ、チーム全員にごきげんよう! と。
小佐野隊長が訊いた。
「キルハウス2かシップメント、そのあたりが超近接戦に向いていると思うのですが、どちらにしましょう?」
ところで、と小佐野隊長の質問に応えず、しのぶがこれからトレーニングを行う来栖治子に身体を向け、値踏みをするように見つめた。
「そういえば、実戦で三人連続ナイフキルをしたのはあなたね」
はい……と治子。
大先輩なのでさすがの治子も緊張している。
「なら、ちょっと難しいかもだけど、シップメントで訓練しましょう」
「かしこまりました、樫村先輩」
シップメントは訓練用施設のなかでは比較的狭い。砂利を撒かれた戦場に、いくつも錆びたコンテナが転がっている。一対一の対戦をするときにもよく使われる施設である。
全員がストライカー歩兵戦闘車から下りると、葉桐薫がモニタリングの機材のスイッチをすべてオンにする。
「改めてよろしくお願いいたします」
と治子。もうすでにフェイス・ガードを装着している。フェイス・ガードには髑髏の絵がペイントされている。
「こちらこそよろしくね──あなたから好きなスタート位置を決めて」
少しの間があって、小佐野隊長が「準備完了です」と告げる。
──スタート! と小佐野隊長。
これは……と誰もが樫村しのぶの動きに驚いた。
無駄がなく、安全な場所と危険な場所では歩速や身体をかがめたり切り替えながら、治子の姿を探している。
あっ……と薫がモニターに映る治子を見つける。
治子なりに慎重に索敵しているのだが、彼女の真後ろにしのぶがいるのに気づいていない。
そのまましのぶはダッシュする。
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