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いったん隊長室へ行くと、ミリタリー・ショップのサイトを見ているようだった。
あ、これね、と隊長の声が聞こえる。
全員食べ終えて、小佐野隊長の部屋に入った。いままで使っていたナイフが玩具に見えるほど、いかついナイフだった。葉桐薫が、これは人殺しに向いてそう、とついつぶやくとしのぶが笑った。
だって……! と薫。
「ごめんなさいね、つい笑ってしまって、でもこれは人殺しにもサバイバルにも向いています……それにそういえば、薫さんと治子さんって──」
「ええ、御想像どおりですっ!」
薫は治子に飛びついて首筋にキスをした。
「そうそう、来栖さんのナイフキル演習のほかに、ふつうに椿さんのカレーをいただきに〈アンティセプティック・チーム〉の部室に遊びにきてもいいかしら?」
椿にとろは小佐野隊長を見る、隊長はにとろにウィンクをしてみせる。
「ぜひ、にとろのカレーを食べにいらしてください!」
ありがとう、としのぶ。そういえば神田神保町にもずいぶん行けてない……思春期病棟に出たり入ったり……わたしも、いえ、わたしこそ頑張らないといけないわね。
その夜、樫村しのぶは思春期病棟のカーテンを開き、はめ殺しになっている窓から空を見つめた。なるほど……あのときの来栖治子と葉桐薫のお互い幸せで満ちた表情。
それでもまだナイフの演習は続くし、椿にとろの作ってくれるカレーもいただきに〈アンティセプティック・チーム〉の部室に行ける。
──そんなささやかな毎日。努力家で負けず嫌いの来栖治子、自分が後輩に教えてあげられるナイフ術──樫村しのぶは夜空を見上げながら近い未来の幸せを味わっていた──。
【了】
2023.04.10 M.M.
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