20人が本棚に入れています
本棚に追加
3
思春期病棟では用意された院内服を着用しなくてはならない。それでも、院内服は、白、ピンク、青、黒などカラー・バリエーションがずいぶんあった。
「わざわざありがとうございます」
黒の院内服を選んだ樫村しのぶはテーブルに額をつけるぐらい深々とお礼を言った。
「大事なことを電話やメールだけで済ますわけにはいきませんから、樫村先輩」
「それでも嬉しいことです、お噂はたびたび聞いております、〈アンティセプティック・チーム〉の御活躍。その隊長、小佐野さんがじきじきに来られるとは……」
樫村しのぶの病室は個室ではあるものの、許可をとって面会室での対話となった。
小佐野隊長はしばらく言葉に詰まった。事前にメールで要件を伝えたとはいえ、相手は目上、しかもナイフキルの達人である。
〈アンティセプティック・チーム〉の来栖治子が凸スナ希望者である。彼女にナイフを使った戦闘の幅が増えるのは単純に喜ばしい。
──わかりました、と樫村しのぶ。
「腕は落ちていないつもりです」
「わたしどももそう思ってます。凸スナ、とくにナイフによる戦闘を樫村先輩からうちの来栖に叩き込んでいただきたいのです」
「ラバーの訓練用ナイフでも首に当たればかなり痛いです。その点は──来栖さん──大丈夫なのでしょうか?」
「ええ、来栖隊員の意志は固く、樫村先輩のトレーニングを待ちに待っておりますから……」
最初のコメントを投稿しよう!