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 思春期病棟では用意された院内服を着用しなくてはならない。それでも、院内服は、白、ピンク、青、黒などカラー・バリエーションがずいぶんあった。  「わざわざありがとうございます」  黒の院内服を選んだ樫村しのぶはテーブルに額をつけるぐらい深々とお礼を言った。    「大事なことを電話やメールだけで済ますわけにはいきませんから、樫村先輩」  「それでも嬉しいことです、お噂はたびたび聞いております、〈アンティセプティック・チーム〉の御活躍。その隊長、小佐野さんがじきじきに来られるとは……」  樫村しのぶの病室は個室ではあるものの、許可をとって面会室での対話となった。    小佐野隊長はしばらく言葉に詰まった。事前にメールで要件を伝えたとはいえ、相手は目上、しかもナイフキルの達人である。  〈アンティセプティック・チーム〉の来栖(くるす)治子(はるこ)が凸スナ希望者である。彼女にナイフを使った戦闘の幅が増えるのは単純に喜ばしい。  ──わかりました、と樫村しのぶ。  「腕は落ちていないつもりです」  「わたしどももそう思ってます。凸スナ、とくにナイフによる戦闘を樫村先輩からうちの来栖(くるす)に叩き込んでいただきたいのです」  「ラバーの訓練用ナイフでも首に当たればかなり痛いです。その点は──来栖さん──大丈夫なのでしょうか?」  「ええ、来栖隊員の意志は固く、樫村先輩のトレーニングを待ちに待っておりますから……」
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