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 それはそうと、と小佐野美潮(みしお)が話題を変えた。  「樫村先輩の具合はいかがでしょうか? 無理をなさらないでほしいのです」  PTSDに関してなら、とりあえず心配なさらないでください──、と樫村しのぶ。むしろ、躁鬱めまぐるしい双極性障害のほうが厄介だった。それを小佐野美潮に伝えると、承知しております、と返事がかえってきた。    「もうしわけありません。でも、よっぽどでなければトレーニングをできると思います。わたしは、僭越ながらその来栖治子さんという凸スナ希望の子に、納得できるスキルを教えられる自負があります。だから、わたしの躁鬱の双極性は問題になりません。  実戦で、死傷してほしくないのです。それは率いている小佐野隊長が、わたし以上に部下の安全を望んでいるのとおなじです」    ──ええ、可愛い隊員を喪いたくありませんから。と小佐野隊長。  「いつから超近接戦闘トレーニングを始めるのでしょうか?」  「できたらなるべく早いうちが……」  「もう少し待っていただけますか、院内(ここ)に長居をしすぎて、足腰が少しなまっているのです。一週間程度、走り込みなどしますのでそれからはどうでしょう? それに、わたしはもうリストカットやオーヴァ・ドーズから完全に足を洗います。僭越(せんえつ)ながらわたしにはナイフ格闘術をほかの子に教える責務があります。ようやくそれに気づくことができました」  「問題ありません、勝手なお願いに応えていただいてありがとうございます!」
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