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いえいえ、と樫村しのぶ。あ、そうだ! と突然なにかを思い出したようだった。
「フェイス・ガードを用意しておいてください、あとはヘルメットも……ナイフで攻撃するときは、必ずしも教本どおりにうまくいくことばかりではありません。顔にラバーとはいえ、ナイフの切っ先など当たる可能性だって高いのです」
それなら、と小佐野隊長が応えた。
「樫村先輩もご存知のように、聖パルーシアの特殊部隊はあちこちの汚れ仕事なども請け負っております。その都度編成されるタスクフォースに参加したりも。
その場合、どこの所属か伏せるためにフェイス・ガードで顔を隠す兵員もいます。まだ、うちの来栖は持っていないと思うので、購入させますね、それと彼女にもランニングをさせないといけないようです」
明るめの茶色い髪をサイドで結き、そこを黒いリボンで飾っている。小佐野美潮よりももしかしたら幼く見える顔立ち。もう樫村しのぶは高等部なのに……ターコイズ・ブルーの眼は少し温和そうでもある。
それでも小佐野はかつての樫村しのぶがなし遂げた潜入任務を思い出していた。
南アフリカの某国で、麻薬と兵器の密輸の連絡に使われる電波システムをたった一人で完全にダウンさせたのだった。もちろん正面から撃ち合いなどもしない。
一度発覚したら数の力で負けてしまうから。
敵の待ち伏せ位置なども読み取って、その裏をかき、待機中のアサルトライフルを構えた兵員やスナイパーをナイフで切り殺し、目的完遂後、悠々と脱出したのである。
樫村しのぶはその神業で、学生証にはHumanではなくESPと表記されているのではないか、そんな噂さえ流れている。
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