わたしと、新幹線と、人工衛星。

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「──得意なことはマンガを描くことです。よろしくお願いします」  お辞儀をして顔を上げた瞬間、クラスメートの反応にやっぱりな、と思った。微妙な空気感。まばらな拍手。予想はしていた──というかいつものことだ。  わたしが自己紹介をするといつもこんな空気感になる。みんなわたしの名前と顔に引っ掛かりを感じるのである。  窓の外で風に揺れる桜を目の端で捉え、その忌々しさに心の中で舌打ちした。  わたしは桜が嫌いだ。そして咲良(さくら)という自分の名前も嫌いだ。  桜は春には綺麗な花を咲かせ、その美しさに見る人々を虜にするが、わたしは桜の花のように美しくない。一重瞼でおまけに顔の真ん中にはそばかすが散りばめられている。性格が明るいわけでもなく教室の隅でいつも趣味のマンガを描いている暗いやつだ。クラスの男子には名前を一文字変えて「オクラ」や「ネクラ」と馬鹿にされる始末である。そんなことを言われる度、桜と比べられているような気になってしょげてしまう。
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