大騒ぎ………?

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大騒ぎ………?

あの後すぐに屋敷に帰ると、ドミは「疲れた」と言って眠りについた。 可愛いドミの寝顔を眺めながら、私ははぁ、と溜め息を吐く。 半強制的に受けさせられた求婚、でも、キスをされて嫌ではなかった。 寧ろその他諸々を含めて気持ち良かったくらいだ。 「やばい、よね………」 お父様が聞いたら失神しそうだし、お母様が聞いたら歓喜に奮えて叫びそうだし、アイサが聞いたらキレそうだし、何より、自分でもあの場で流された感がすごいと思ってる。 「でも、言わなくちゃダメよね」 丁度決意を固めたそのときだった――― 「きゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 お母様の叫び声と 「私は許しませんよ!!」 アイサの怒鳴り声が聞こえてきた。 「んー………おねえさま、なあに? うるさいんだけどぉ」 寝ていたドミが眠たそうにして起き上がった。 「分からないけどお母様とアイサがうるさいわ。様子見てくるわね」 私がそう答えて部屋から出ていこうとすると、服の裾を捕まれた。 「ドミも連れてってぇ……………」 可愛い……… 「自分で歩ける?」 「うん、だいじょーぶ」 大丈夫と言って立ち上がったドミだが、フラフラしていて心配で結局手を繋いでいくことになった。 「どこ?」 「多分客間よ。お母様が叫んでるならね」 大方目星をつけて、客間へ向かって歩く。 数分して着いたその扉に手を掛け、開ける。 「…………なんでいるんですか」 そこにいたのは、先程別れたばかりのアインツ様とヴァイス殿下だった。 「ちょ、ベロニカ嬢。そんな嫌そうな顔しないで」 「アインツ様は、まぁ良いですけど………………」 「いいんだwww.なんで兄上は嫌なの?」 「考えればわかると思いますけど。さっきの相当キてますからね」 「あー……………ね?」 淡々と会話をする私とアインツ様をみて、お母様は開いた口が塞がらないようだ。 お父様は失神してるし、アイサはキレてる。 「ヴァイス殿下、お引き取り願います。てかなんでいるんですか。さっさと仕事しろ」 にこやかにそう言うと、アインツ様から苦笑が返ってきた。 「いや、今日の公務がシリア領の偵察でどうせ当主と話しなきゃいけなかったからついでに、と思って………」 「“ヴィー”な?」 真面目な回答をくれるアインツ様の横でヴァイス殿下はふざけたことを言っている。 「黙ってください」 「呼んでくれたら」 「は? 嫌ですよ」 「じゃあ膝貸して」 「調子に乗らないでくださる?」 「無理。何かしてくれるまでやめない」 「……………」 「おい、無視すんな」 段々と喋るのがめんどくさくなってきて無視することにした。 「それで、先程の話は本当なのかしら?」 ハッとしたように王子達に問い掛けたお母様。 「もちろん、俺は本気ですよ。兄上のことは知りませんがね」 「は? 本気に決まってんだろ。そうでもなきゃわざわざ親元まで来ねーよ」 その答えを聞いて――― 案の定絶叫した。 「いいわよ、いいわよ、娘両方あげるわ! そのかわりちゃんと幸せにしてちょうだい!!」 仮にも王子に対して砕けすぎている。 「私は何があっても許しませんよ! アインツ殿下は………まだいいとして、嫌な噂しか聞かないヴァイス殿下は嫌ですよ! うちのお嬢様は渡せません!」 「俺は良いんだ………」 アイサはアイサで沸点が分からない。 「いいですか、お嬢様。この第一王子は誰に対しても冷たく、人の心など持ちません。だからこの求婚は絶対に受けてはなりません」 「ははっ、酷い言いようだね」 「あいつなんだよ。使用人の分際で………」 「兄上の普段の言動がいけないのでは?」 「なんで興味ねー相手に真摯な態度で接しなきゃいけねーんだよ」 一応自覚しているらしく、アインツ様の言葉を否定する素振りは見せず、寧ろ堂々と宣言している 「初対面の人間にナイフ投げてくるくらいですからね」 「嫌味言うなよ。知らねーやつがいきなり入ってきたら警戒するだろ普通」 「だからって人の顔面スレスレでナイフを投げるなんてことしませんよ?」 「いいか、まずな──────────」 ここからはありえないくらいに長いから省略させていただく。 「─────────────と、言うわけだ。わかったか?」 ヴァイス殿下の話が終わる頃には皆が引き攣った顔を浮かべていた。 要約すると、『今日は来訪の予定はなかったから応接間に行ったのに誰か来るし、しかも知らない気配だったからなんか悪いやつだと思った。いや、別に城の警備を馬鹿にしてるわけではなく、普通にね。なんかすごい強そうな気配だったから一瞬動きを鈍らせる程度にナイフ投げたら避けられるし可愛いわけじゃん。ほら、俺なんも悪くない』だ。 要約してもこんなに長いわけだ。 「兄上、言い訳は見苦しいですよ」 にっこりと毒を吐くアインツ様。 「アインツ、お前な………」 若干キレ気味のヴァイス殿下はニコニコして(自分)揶揄(からか)(アインツ)を軽く睨む。 「兄上、優しくない男は嫌われますよ」 それでも態度を変えないアインツ様は、かなりの勇者のようだ。 ヴァイス殿下は話すのがめんどくさくなったのか、呆れたようにため息をついた。
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