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夜道をひとりで歩きながら、ずっと妖怪たちのことを考えている。
彼らはまた、どこかで宴会をしているのだろうか。僕を助けてくれた羅善丸は、あれから無事にあちらへと戻れたのだろうか。気になるけれど、もう僕は彼らへと近付いてはいけない。助けてもらった命を粗末にする訳にはいかない。人間は人間、妖怪は妖怪だ。
あの時は気が動転していたけれど、思い返せばやっぱり楽しかった。それに、あいつらも気のいいやつらだった。妖怪たちの宴会に参加してみたおかげで、今の僕があるのだ。人生の楽しみを、妖怪たちに気付かされるなんて。
あいつらが僕を食べようとするのも、仕方がないことだよな。川辺でバーベキューをしている時に、新鮮でうまそうな魚がやってきたら、そりゃあ食べてしまうだろう。
生きることは食べること。食べることは奪うこと。食とは、相手の命、肉、骨、血、尊厳、未来、すべてを奪う行為だ。妖怪が食べる側で、人間は食べられる側。種族が違う限り、やっぱり完全な相互理解なんてものは不可能なのだ。そのことを少し寂しく思うと同時に、こうも思う。
あいつらの話によると、人間上がりの妖怪もそれなりにいるらしい。もし僕が死んで妖怪になったとしたら、妖怪たちの気持ちも理解できるだろうか。確かに今はまだ無理だけれど、向こう側へ行って、やっと心から笑えるようになったその時なら、今度こそ本当の仲間になれるかもしれない。そう考えると、自分がいつか死んでしまうことも、少し楽しみだと思えるのだ。
だから、きっと僕は大丈夫。向こう側に行くまでの生涯を、思い切り満喫してたくさんの土産話を持っていってやろう。きっと、楽しい宴会になるはずだから。
「よし、明日も頑張るぞっ!」
誰もいない夜道の中、僕はそんな決意を口にした。
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