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突然、強い風が吹いた。
地面に積もっていた桜の花びらが舞い上がる。
それは、枝から舞い落ちる花びらとも重なって、辺り一面を、淡いピンクで埋め尽くす。
ひらひらと舞う桜の花びらに囲まれながら凪子は思う。
何て美しいのだろう。
そして、
何て儚いのだろう。
そして、
何て悲しいのだろう。
強い風に、為す術もなく舞う花びら。
何だかそれは、為す術もなく終わった自分の恋と同じように思えた。
桜は、儚いからこそ美しい。
だけど、
儚いだけの桜なんて嫌いだ。
儚く終わったこの恋も。
ただ見つめていることしかできなかった、こんな自分も。
おしまい
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