序章

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序章

 かつて世界は地続きだった。  まっさらな大地を息吹かせるため、天は地上に神と天使を遣わされた。  神は生命を生み出し、天使はそれらを育んだ。  地上には善なるもののみが息づいていた。  営みが広がっていくと、天使たちの管理だけでは追いつかなくなった。  神は自ら思考し豊かさを作り上げる存在を求め、自分に似せた命を、人間を作った。  神や天使に叛くことのないように、翼は与えず、神通力も使えないようにした。  己の手足と、知恵のみを使う存在。しかしそれは、急速に成長し、繁殖した。  個体数が増えると、同種の間で差異が出るようになった。その差はいつしか争いの種となり、人間は『悪意』を持つようになった。  善なるもののみで保たれていた平和は崩れ、悪意は凝り固まり、地の底から『悪魔』を生み出した。  悪魔は人の悪意から更に『魔物』を生んだ。  『悪』が形を得たそれらは、何もかもに害をなし、世界に恐怖をもたらした。  手に負えなくなった神は、大地を粉々に割った。  集まってしまえば争うのなら。そこに悪意が生まれるのなら。多くが集まらないように、大地を小さくしてしまおう。  悪なるものたちは、世界の一番遠い所へ追いやってしまおう。  そして自分たち、善なるものが住まう大陸を一つ残して、人々は交流できないように海で分断され、悪なるものたちは暗くて寒い地の果てに追いやられた。  それでも人は知恵をつける。分断された海を渡る手段を生み出し、割れた大地と大地の間を行き交うようになった。  悪意は止まず、悪魔に力を与え続けた。  苦悩の末、神は一人の女神を悪魔の元へ送り込む。  女神の計略により、悪魔は神の剣で胸を貫かれ、打ち倒された。  『悪』の象徴を失った人々は、再び『善』なるものに救いを求め、導かれ、従った。  かくして、世界は再び平穏を取り戻した。  かの女神はその栄誉を称えられ、善なるものたちが住まう国の紋章に刻まれることとなった。  現在のセントラルの国章、女神マリアである。  ――セントラル建国書より抜粋。
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