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エピローグ
佐倉春香は、友人たちと近くの公園でお花見をしていた。持ち寄った食べ物とお酒を並べ、他愛ない話で盛り上がる。
ただ時折遠くを眺めてはため息をついた。先ほど行ったコンビニで委員長とばったり再会したことが原因なのもわかってる。
私は春が嫌い。だって好きな人にフラれた季節だから。
彼は私にこう言ったの。
『花みたいな子なんだ。ちょっとぶっきらぼうなその子のことがずっと気になってて……たぶん好きなんだと思う』
花と聞いてすぐにピンときた。近藤椿ーー委員長のことだって。
ずっと見てたから知ってる。あなたが委員長の前でだけ見せる、はにかんだ笑顔のこと。話し終えた後に嬉しそうにガッツポーズをすること。
本当はすごく悔しかったの。私にはあんな顔をさせられないし、見せてくれないから。
私にも花があれば良かったのに……佐倉なんて名字じゃなくて、春香なんて香りじゃなくて、ちゃんとした"花"になりたかった。
どうして委員長は彼の想いに気づかないんだろう。あんなに想われてるのにずるいよ。
彼女がきちんと自分の気持ちに向き合えば、欲しい未来が手に入ったはずなのに、どうしてあんなに卑屈になるんだろう。
だからそんな委員長が嫌いだった。
でも委員長って、気持ちを入れ替えればもっと前向きになれる気がする。そう考えるとすごくもったいないのよね。
私がどうにか出来ないかな……。ヒロくんへの恋は終わってしまったけど、告白していない委員長の恋はまだ終わっていないはず。彼女のことだから、今も引きずっている可能性は高い。
何故だろう。不思議と元気になってきた。
よし、委員長のバイトの終わる頃合いを見て、待ち伏せしてみよう。そして初めて委員長と向き合ってみるの。そうしたら私の中の何かが変わるような気がした。
椿の花を好きになれれば、"さくら"の花だって好きになれるはずーー。春の訪れも、きっと明るいものになるに違いない。
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