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あれから二度目の春がやってきた。外に出るたびに目に入る桜の花を見ながら、椿は胸がチクリと痛んだ。
桜を見ると好きだった彼のことを思い出す。告白出来ずに終わった恋。それと共に佐倉さんの笑顔が蘇り、私の心の傷を再びえぐった。
思い出すだけでもそうなるのに、
「あっ、もしかして委員長⁈ えっ、ウソ! ここでバイトしてるの? すっごい偶然!」
まさか目の前に現れるなんてーー。
「あぁ、佐倉さんじゃないですか。久しぶりですね」
椿はコンビニのレジカウンターの中から、無表情のままそう答えた。そんな様子に反して佐倉はウキウキした様子で、食材や飲み物がたくさん入ったカゴをカウンターに置いた。
「っていうか、こんなお花見日和なのにバイトなの?」
「お花見日和とバイトには全く関係はありませんが」
「うわぁ、委員長ってば全然変わってないねー!」
彼女の言葉を流し、椿はバーコードをスキャンしていく。ちらっと見ると、白のふんわりとしたニットに、ベルト部分にリボンがついたピンク色のショートパンツ、白のハイカットスニーカーを合わせ、ゆるふわパーマのセミロングの彼女は、高校時代より更に可愛さを増しているような気がした。
「レジ袋はどうされますか?」
「お願いしまーす」
軽いな……と思うのは、自分にはそんなスキルがないから。男の人はこういう可愛い子が好きだってわかっているのに、自分自身を変えることは出来ない。
商品を袋詰めしている間も、佐倉からの視線をビシビシと感じる。
「ねぇねぇ委員長。私たちそこの公園でお花見をしてるんだけど、後でおいでよ。おしゃべりしようよ」
「今日は夜までシフト入ってますので」
「えー、残念。終わったらそのまま帰っちゃう感じ?」
「そうですね」
椿は袋を佐倉へ手渡し、後ろで待つ客へと視線を移す。
「ありがとうございました」
「うん、じゃあまたね!」
店を後にする佐倉の後ろ姿は、相変わらず可愛く見えた。
本当はすごく……すごく羨ましい。私だって佐倉さんみたいに可愛いくなりたいって思うのに。
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