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まさかそんなことを言われるとは思わなかった。その姿を見て、佐倉は口の端を小さく微笑む。
「まぁヒロくんは気付いてなかったみたいだけど。私は近くにいたからわかっちゃったー。でもさ、委員長ってずっと遠くから見てるだけで、何もしなかったよね」
「……何が言いたいんですか?」
「うーん、なんていうかさ、ヒロくんのことをカッコイイって言って、キャッキャしてる子はたくさんいたんだよね。でも私と同じくらいの重さで彼に恋をしてたのって、たぶん委員長くらいだと思うの」
「えっ、私ってそんなに重く見えてたんですか⁈」
「うんうん、重い重い。そりゃ重量級。でもそれだけ真剣ってことだよね。だから私も委員長を"心のライバル"って認めてたんだけど」
「し、知らなかった……っていうか、心のライバル?」
「そう。委員長は私のことが嫌いだったでしょ? でもきっとそれも同じ理由だったんじゃないかな」
確かにそうかもしれない。あんなにたくさん女子がいる中で、私が悔しい、羨ましいと思ったのは佐倉さんだけだったから。
「委員長は気付いてなかったかもしれないけど、ヒロくん、すごい歴史好きなんだよ」
「あぁ、それはなんとなく知ってた」
「隠してるわけじゃないけど、話してもわからないだろうって思ってたみたい。だからその話がちゃんと出来るのは、勉強が得意な委員長しかいないんだって喜んでた」
思い返してみれば、彼と初めて話をしたのは織田信長についてだったかもしれない。それから時々声をかけられて、会話が盛り上がると嬉しくなった。
「だから私、委員長にすごく嫉妬したんだよ」
突然佐倉の声が低くなり、椿は驚いて顔を上げる。だが彼女の表情は全く変わらず、相変わらず微笑みを浮かべていた。
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