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「委員長はどうして何もしなかったの? 好きだったんじゃないの?」
「それは……」
椿は唇を噛み締める。何しろ自身が何も出来なかった要因になった人物が目の前にいるのだからーーでもそんなことは癪だし言えず、椿は下を向いた。
「私は……佐倉さんみたいに可愛いくないし……楽しい会話だって出来ない。私が入って空気を悪くしたら耐えられないし、私みたいな地味な女子があのグループに入るなんて絶対に無理だし、それにーー池田くんを見ているだけで満足だったんです」
そう言い切ってから顔を上げた椿は、目の前の光景に目を見張る。いつも笑顔を絶やさなかった佐倉が、無表情のまま椿を見つめてハンバーガーに食らいついていたのだ。
「要は逃げただけだよね。フラれるのが怖いから」
「だって仕方ないじゃないですか。私は……佐倉さんみたいに自信なんかないし」
「別に私だって自信満々なんかじゃない。でも頑張らないと好きになってもらえないと思ったから、精一杯のことをやったの。だから私は委員長は何もしなかったって感じちゃうんだ」
どうして佐倉さんにそこまで言われなきゃいけないの? 私のことなんて何も知らないくせに。
佐倉はハンバーガーに包み紙をキレイに畳みながら、満足そうに炭酸水をストローで吸い込む。
「委員長さ、卒業式の日に私が告白したのを見てたでしょ? 頭隠して尻隠さずーー校舎の影にしっかり委員長の姿が見えていたんだから」
体がビクッと震え、思わず頬が引きつった。まさか見ていたこともバレていたとは思わなかった。
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