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 佐倉は落胆したように大きなため息をついた。 「……委員長って、本当に後ろ向きなんだねー。街で偶然会うかもーとか思わないの?」 「だってそんな非現実的なこと……それに彼の進学先だって知らないし」 「じゃあ、もし私が知ってるって言ったらどうする?」 「で、でも……私なんか……」 「はい、ストップ! 『私なんか』って思うってことは、まだ池田くんを引きずってるってことじゃない?」  椿は渋々頷く。こんなこと、恋のライバルに話しても良いのだろうか。でもこのままだと、一生あの時のことを引きずったまま、毎年苦い春を迎えることになるだろう。 「本当は……まだ池田くんが忘れられない」  椿の言葉を聞いた佐倉はにっこり笑うと、彼女の鼻先を指で突いた。 「いいなぁ。委員長の恋はまだ続いている。よし、今から当たって砕けちゃえ!」 「えっ⁈ 砕けるのは嫌なんだけど!」  反論した椿に、佐倉は楽しそうに笑いながら言葉を付け加える。 「それなら私の言う通りにしなさい。私が委員長を変えてあげる。きっとこれからは春が好きになれるよ」  その言葉に椿はハッとする。春が嫌いだったのは私だけじゃない。佐倉さんも同じように春に傷ついて前に進めなくなっているんだ……。  佐倉の不敵な笑みの裏には、彼女の心の傷が隠れていたことにようやく気付く。私たちは同じように、春の記憶に縛られているんだ。  佐倉さんも心の傷から立ち直ろうとしている。それなら一人より二人の方が、回復も早いに違いない。 「じゃあ……春が好きになれるように、アドバイスをもらえる?」 「もちろん!」  少しだけ"さくら"を好きになり始めたから、きっともう大丈夫。"さくら"を好きになれれば、春も好きになれるに違いない。
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