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「おたまには悪い事をした。おゆきが来てから、寂しい思いをしていただろうに。その上私がきつく言ったから、出て行ってしまったんだろう」
それからわたくしの目を覗き込まれ、子守歌の様に優しく語り掛けます。
「だけどね。おゆきをうちの子にしたのは、おたまの為でもあったんだよ。おたまが一人ぼっちだと、寂しいかと思ってね。でも、私をおゆきに取られた様な気がしてしまったのかもしれない」
しみじみとおっしゃる旦那さまを見上げ、わたくしは胸の中に温かいものが広がっていくのを感じました。
やはり、旦那さまはわたくしを大切に想っていてくださった。
それが分かっただけで、報われた気持ちでした。
「おたまがおゆきを野良犬から守ってくれたんだね。お前も怖かっただろうに、よく頑張ってくれた。ほら、おゆきもお礼をお言い」
旦那さまに抱き上げられたおゆきは、うつむいてわたくしを上目遣いに見ます。
「ごめんよ。あたい、おたま姐さんが羨ましかったんだ。あたいは野良育ちで、誰も見向きもしてくれなかったから。あたいを拾ってくださった旦那さまに可愛がられてる姐さんが、羨ましくって」
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