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同じ母さまのお乳を吸った彼らと離れるのは寂しゅうございましたが、これも運命であると受け入れる事にいたしました。
幸い、お仕えする事になる旦那様は間違い無くわたくしを可愛がってくださるでしょう。
愛おしくてならない様にわたくしの顔を覗き込むと、
「ああ、お前の目は透き通ってまるで玉の様だねえ。今日から、お前の名はおたまだよ」
と素敵な名前をくださったのです。
生家でも名前が無かった訳ではございませんが、旦那様の付けてくださったこの名をわたくしはとても気に入ってしまいました。
こうして、おたまとしてのわたくしの生活が始まりました。
広々としたお屋敷にはお年を召された旦那様と、これまたお年を取った女中のたえさんの二人きりでした。
お屋敷にやって来た夜、早速たえさんはわたくしをお風呂に入れて、身を清めてくれました。
わたくしの体を石けんで磨き立てながら、独り言の様に色々と教えてくれたのです。
「旦那様は快活な方でいらっしゃるが、奥様を亡くされて以来、お寂しくされているからねえ。だから、お前がしっかりと旦那様をお慰めして差し上げるんだよ。おたま」
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